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外商投資安全審査弁法の解説について

2021-01-22/ 弁護士コラム/ 李太陽

Q:2020年12月19日に国家発展改革委員会と商務部は「外商投資安全審査弁法」を公布し、同弁法は公布日から三十日後に施行される。ある意見によれば、この弁法の実施は外商投資に対して非常に大きな影響を発生させるものと考えられているようである。この弁法の具体的な内容や、外商投資に対する影響などについてご紹介願いたい。

A:中国において、外商投資安全審査制度は実際のところは、一つの新しい制度ではありません。2006年に既に商務部等が共同で公布していた「外国投資者による中国国内企業の合併買収に関する暫定規定」の中では、外資による合併買収に対する安全審査制度が規定されていました。その後に、国務院及びその直属の商務部等は一連の実施細則を公布し、外資の合併買収に対する安全審査の具体的な適用に対する規定を行っています。今回公布された「外商投資安全審査弁法」は、これまでの外資による合併買収に対する安全審査制度の承継および発展と理解することができます。以下におきましては、中国における外商投資安全審査制度の発展およびその内容の概要に対し、簡単にご紹介させていただきます:

1. 中国における外商投資安全審査制度の確立と発展の概要

外資の合併買収にかかわる安全審査制度については、最も早い段階においては、商務部等が2006年8月8日に公布した「外国投資者による中国国内企業の合併買収に関する暫定規定」(同年9月8日から施行)の第12条の中で確認することができます。その規定によりますと、外国投資者が中国国内企業を合併買収して実質的な支配権を取得し、重点的な業界にかかわっており、国家経済の安全に影響し、もしくは影響するおそれのある要素が存在し、または著名商標もしくは中国における従来の有名ブランド(中国語:「中華老字号」)を所有する中国国内企業の実質的な支配権の移転を引き起こす場合には、当事者はこれについて商務部に申告等を行わなければならないとされています。その後に、2008年8月1日に実施が開始された「独占禁止法」においても、外資による合併買収に対する安全審査の関連規定が設けられています。

上述の規定を基に、2011年2月3日には、「外国投資者による中国国内企業の合併買収に対する安全審査制度の確立に関する国務院弁公庁の通知」が公布されました。その後に、商務部はさらに「外国投資者による中国国内企業の合併買収に対する安全審査制度の実施関連事項に関する商務部の暫定規定」等を公布し、外資による合併買収に対する安全審査の審査範囲、審査内容、審査業務の仕組み、主要手続、文書·資料の要求、審査結果などに対する明確化を行っています。

2015年4月8日には、国務院弁公庁が「自由貿易試験区外商投資国家安全審査試行弁法」(国弁発〔2015〕24号)を公布し、自由貿易試験区内における外商投資安全審査の範囲、審査内容、業務の仕組み、手続などに対する明確化を行っています。

2015年7月1日に公布·実施された「国家安全法」の第五十九条においては、国家安全審査制度の外延が、外資による中国国内企業の合併買収以外の貿易等のその他の分野にまで更に拡張されています。2020年1月1日に正式に実施された「外商投資法」においては、外商投資の国家安全審査制度が正式に確立されています。この二つの法律を基礎とし、2020年12月19日に、国家発展改革委員会と商務部が「外商投資安全審査弁法」を公布しています。

前文から見ますと、外商投資安全審査制度は実際のところは、従来の外資による合併買収に対する安全審査制度の承継および発展と理解することができますが、一つの真新しい制度ではありません。

2. 外商投資安全審査の範囲

規定によりますと、国家の安全に影響を及ぼし、または影響を及ぼすおそれのある外商投資に対しては、法により安全審査を行う必要があります。ここにいう外商投資とは、外国投資者が直接または間接的に中華人民共和国の国内(以下「中国国内」)において実施する投資活動をいい、これには、(1)外国投資者が単独またはその他の投資者と共同で中国国内において投資するプロジェクトの新規立ち上げまたは企業の設立(すなわち「グリーンフィールド投資」)、(2)外国投資者の合併買収の方法を通じた中国国内企業の持分または資産の取得(すなわち「持分または資産の合併買収」)、および(3)外国投資者のその他の方法を通じた中国国内における投資が含まれています。1

安全審査の範囲内の外商投資は、国家の安全にかかわる外商投資と、その他の外商投資という二つの大きな類型に分けることができ、二つの類型の各々の具体的な要求は、下表の示すとおりとされています:

外商投資の類型具体的な分野·範囲その他の要求
国防上の安全にかかわる外商投資軍事工業や軍事工業関連等の国防上の安全にかかわる分野への投資、および軍事施設と軍事工業施設の周辺地域における投資なし
その他の外商投資国家の安全にかかわる重要農産物、重要エネルギー·資源、重大設備の製造、重要インフラ、重要運輸サービス、重要文化製品·サービス、重要な情報技術およびインターネット製品·サービス、重要金融サービス、重要技術、および他の重要分野への投資投資対象企業の実質的な支配権の取得

上表の示すとおり、国防上の安全にかかわる外商投資には、「投資対象企業の実質的な支配権の取得」という要求は存在していません。言い換えますと、この種の外商投資に対しては、投資者が「投資対象企業の実質的な支配権を取得している」か否かを問わず、いずれも外商投資安全審査を行う必要があります。一方、国防上の安全にかかわる外商投資以外のその他の外商投資に対しては、ただ対象となる業界または分野の範囲に属し、これと同時に「投資対象企業の実質的な支配権を取得している」という場合においてのみ、初めて外商投資安全審査を行う必要があります。

「投資対象企業の実質的な支配権取得」の認定については、以下の状況が含まれています:1)外国投資者が企業の50%以上の持分を保有しているとき。2)外国投資者が保有している企業の持分は50%に足りていないが、同者の有する議決権が株主会、株主大会または董事会の決議に対して重大な影響を発生させることができるとき。3)その他の外国投資者が企業の経営の意思決定、人事、財務、技術等に対して重大な影響を発生させることのできる事態を引き起こす状況。しかし、外国投資者の「支配権」または「重大な影響」をどのように認定すべきかについては、今後公布される実施細則等の中で更に明確化される必要があります。

3. 外商投資安全審査の申告と受理部門

規定の下で、中国においては外商投資安全審査業務機構(以下「業務機構」)が特別に確立されており、外商投資安全審査業務の組織·調整·指導の責任を負っています。業務機構弁公室は国家発展改革委員会の下に設けられており、国家発展改革委員会と商務部が主導し、外商投資安全審査の日常的な業務を担当しています。

外商投資安全審査の申告資料も、国家発展改革委員会の政務服務大庁が受理を担当しています。申告資料には、主に当事者及び投資取引の概要などが反映された申告書、投資案、投資取引による国家の安全への影響についての説明などが含まれています。

申告範囲内の外商投資に対し、当事者(外国投資者または中国国内の関連当事者)は業務機構弁公室に申告を行わなければなりません。当事者は業務機構弁公室に外商投資を申告する前に、関連問題について業務機構弁公室に照会を行うことができます。照会の際には、相応の書面の説明等の資料を提出する必要のある可能性があります。

外商投資安全審査は原則として、外国投資者が自発的に申請を行いますが、しかし、外国投資者が自発的に申請を行っていない場合において、関連の機関、企業、社会団体、社会の公衆等が外商投資安全審査を行う必要のあるものと考えたときは、業務機構弁公室を通じて提案または通報を提起することができます。業務機構弁公室は外商投資安全審査実施の必要性が確かにあるものと考えた場合には、審査の実施を決定することもできます。

4. 外商投資安全審査の内容

外商投資安全審査の審査内容については、「外商投資安全審査弁法」そのものの中では規定されていません。これまでに公布されている外資による合併買収に対する安全審査の関連規定を参考にしてみますと、その審査内容には以下のいくつかの面が含まれている可能性があります:外商投資取引の国防上の安全や国家の安全(国防上の安全に必要な中国国内製品の生産能力、中国国内サービスの提供能力および関連設備·施設を含む。)に対する影響、外商投資取引の国家経済の安定的な運営に対する影響、外商投資取引の社会の基本的な生活秩序に対する影響、外商投資取引の国家の安全にかかわる重要な技術研究開発能力や重要な業界·分野等に対する影響など。

5. 外商投資安全審査手続

「外商投資安全審査弁法」の規定によりますと、中国における外商投資に対する安全審査の審査手続は、仮審査、一般審査、および特別審査の三つの手順に分かれています。初めに、業務機構弁公室は仮審査(15営業日)を通じて安全審査を行う必要のある外商投資取引を選別します。安全審査を行う必要のある外商投資取引に対しては、先に一般審査(30営業日以内に完成)を行い、一般審査を通過することのできなかったものに対しては、改めて特別審査(60営業日以内に完成し、特定の状況下においては延長することができる。)が始動されます。

審査手続において、申告当事者は業務機構弁公室の安全審査業務に協力し、安全審査に必要な資料と情報を提供し、関連の尋問を受けなければなりません。安全審査の過程において、申請者は取引案の修正または投資取引の撤回を業務機構弁公室に申請することができます。

6. 審査の結果

申告された取引の国家の安全に対する影響に基づき、業務機構弁公室が安全審査を行った後の最終的な審査と決定の類型は、主に下表のとおりになるものとされています: 

取引の国家の安全に対する影響の状況審査と決定の類型
申告された外商投資が国家の安全に影響を及ぼさないとき。安全審査通過の決定が下され、当事者は投資を実施することができる。
申告された外商投資が国家の安全に影響を及ぼすとき。投資禁止の決定が下され、既に実施していたときは、持分または資産を期限を設けて処分し、および他の必要な措置を採択して投資実施前の状態に戻し、国家の安全に対する影響を解消しなければならない。
申告された外商投資が国家の安全に影響を及ぼす場合において、条件の付加を通じて国家の安全に対する影響を解消することができ、かつ、当事者が付加条件の受入れを書面をもって確約したとき。条件付きで安全審査通過の決定が下され、かつ、決定書の中では付加条件が列挙され、当事者は付加条件に従って投資を実施しなければならない。 

7. 違法責任および関連事例 

規定によりますと、当事者に申告の拒否、虚偽内容のねつ造、付加条件の不執行などの規定違反行為が存在していた場合においては、業務機構弁公室は是正を命じることができます。当事者が是正を拒否したときは、持分または資産を期限を設けて処分し、および他の必要な措置を採択して国家の安全に対する影響を解消するよう命じることができ、かつ、不良信用記録の追加等を通じて懲戒を行うこともできます。

関連の事例につきましては、全面的ではないリサーチによりますと、現在のところは永輝スーパーマーケットによる中百グループの合併買収案件などの少数の公開されている事例が存在しています。この事例の中では、永輝スーパーマーケットが中百グループの持分に対する株式公開買付の実施を計画していた際に、永輝スーパーマーケットの大株主が中国国外の企業であったことから、2019年8月21日に永輝スーパーマーケットは国家発展改革委員会の書状を受け取り、外商投資安全審査申告の実施を要求されました。その後、永輝スーパーマーケットは外商投資安全審査申告を実施し、2019年12月27日にはさらに公告を公表し、同社が本件買収を中止するよう申請した後で、国家国家発展改革委員会は「12月25日付けで当該株式公開買付に対する審査を終了した」という旨を明らかにしました。推測によりますと、永輝スーパーマーケットによる買収中止の原因は、永輝スーパーマーケットがこの取引の引き起こすおそれのあった国家の安全に対する審査部門の懸念を払しょくすることができなかったからであったものと思われます。

上述の事例を踏まえた上で見てみますと、ここ数年、中国においては全体的に外商投資手続の利便化と市場参入条件の内外資平等化の改革が強化されており、これと同時に、外資の合併買収に対する安全審査と企業結合(中国語:「経営者集中」)審査は既に、外資の中国における投資の実施に影響する最も主要な監督管理手続になっています。国家の安全と公共の秩序は一般的には各国の外資審査のレッドラインであることから、ひとたび投資されるプロジェクトがこれらの分野にかかわっていた場合には、投資取引は非常に大きな不確定性に直面することになります。このため、投資取引の円滑な実施を確保するためには、取引において可能な限り早期にその中に存在する可能性のある国家安全リスクを洗い出して必要な対策を採択し、これにより取引の円滑な推進を最大限に確保する必要があります。


[1] 「外国投資者のその他の方法を通じた中国国内における投資」の具体的な範囲につきましては、現在のところは明確な規定は存在していません。「商務部公告2011年第53号――外国投資者による中国国内企業の合併買収に対する安全審査制度の実施に関する商務部の規定」における第9条の規定を参考にしますと、外国投資者の投資については、取引の実質的な内容と実際の影響の面から、それが外商投資安全審査の範囲に属するか否かを判断すべきであるものと弊職らは理解しています。外国投資者がその他の典型的ではない方法(代理保有、信託、多層的再投資、賃貸借、融資、持分変動事業体〈VIE:Variable Interest Entity〉、中国国外における取引などを含むが、これらに限定されない。)を採択して実施する中国国内における投資は、原則として、依然として外商投資安全審査の範囲に属する可能性があります。

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